ヴァイオリニスト・五嶋龍さん講演会

Info-Fresh12/30/2019

12月19日 第58回月次定例会にて『年末特別企画!ヴァイオリニスト五嶋龍さん講演会』開催

五嶋さんは多忙を極めるツアー中以外の時間を利用し、音楽以外にも社会活動や事業活動に積極的に関与されているとのこと、本講演会ではご自身がBusiness Developmentを担当されている「Arctop」というニューロサイエンスのスタートアップ事業のお話をしていただきました。

「Arctop」は人間が物を覚える仕組みを援用し、人間の脳波を感知します。さらに、その解釈が正しかったかどうかを見極めて判断し、AIが記憶していくというプロセスを繰り返すことでアルゴリズムが開発されました

ちなみに、人間の脳波は一人ひとりパターンが違い、DNAや指紋と同じように固有のIdentityを持っており、双子でも全く違うパターンを持つそうです。「Arctop」では、5~10分の映像やアート(音楽・絵画・映画)など様々な外的刺激に対して、脳波がどのような反応をするかを計測し、Identityを判明させます。それによって生データではバラバラの形状を持つ各人の脳波データを7種類

の感情に分類して計測し、それを標準化することが出来るそうです。

「Arctop」の脳波の計測は精緻な研究目的を別にすれば、市販のデバイスでも可能で、額や顔に表出する脳波をキャッチして測定でき、時代や地域を超えてヒットする作品(例えば旧約聖書、新訳聖書、シンデレラ)は計測される脳波の形状に共通の特徴があり、「時代を超えてヒットし続けるストーリー」には形があるということを科学的に説明することができるのです。

ここに「Arctop」の強みがあります。

実際、人気バンドの人気曲への反応をサンプリングすると、多くが同じパターンの形状に落ちるそうで、有力な音楽レーベルでも次にリリースする曲がヒットするかどうかのData Analyticsで活用しています。このような手法を活用して性別・文化・国籍別にヒットの度合いを分析することもできるそうです。

 ご自身もミュージシャンである五嶋さんに対し、「これではヒットする音楽が全て科学によって画一化され、芸術ではなくなるのでは?」という問題提起がなされましたが、答えは、「あくまでこれは手段と技術の違いだけであり、何かを技術により成し遂げたいという芸術家の活動に変わりはない。」とのこと。具体的には、五嶋さん自身はライブコンサートの際は聴衆からの反応を視覚的に分析しており、今のフレーズが観客にストレートに受けた(伝わった)のはなぜか、どの要素が好反応につながったのか、逆に今はなぜか音楽のメッセージ、自分のメッセージが伝わっていないのかを日常的に考え、世界各地でライブをしながら自身の知見を蓄積しているそうで、実は皆が日常生活でも無意識的にやっていることをより忠実に、効率的に見れるようにするだけとのこと。すでにプロの方は、数式を自身の創作活動に意識的に取り入れており、それがエンタメになるのかアートになるのかはクリエイターが決めることであり、大事なのは「こ技術で何をしたいかだ」とのこと。こういったことを考えずにヒット曲を出せる才能をもったアーティストもいるが、そういう人もある程度は感覚でストーリーテリングを実感しているはず、と芸術家としての視点からから科学を語ってくださいました。

 言葉などによる意識的なフィードバック(アンケートに答えるなど)と比べて、脳波を計測してのフィードバックの利点は、社会的なプレッシャーや文化的背景によって自分自身の答えを精査してしまうバイアスを避けることができる点です。また、言語では難しいリアルタイムでのフィードバックを得ることができるため、特定の楽曲の何分何秒の音に対する反応をピンポイントに計ることができる利点があります。さらに、同じ言葉でもその度合いの違いを世代別に計測する等、深い分析も可能になるそうです。

 MBAの会らしい質問として、「この技術は面接に使うことができるのか?また、各人のプライバシーの観点から考えていることを意図せず悟られてしまう問題についてはどう考えているのか?」というビジネスへの適用、およびテック企業の企業倫理に関する質問がでました。こちらも先ほどの芸術と科学の議論と同様、面接においても言語以外の受け答えの様子が無意識のうちに視覚的に考慮に入れられたり、より分かりやすくはSNSでの活動がモニターされる等、必ずしも本人が意図した情報以外を含めて判断がなされる点は変わらずとも、あくまで問題は技術をどのように使用するかというスタンスであるとのこと。また「Arctop」はプライバシーの観点には特段の注意を払っており、各人を特定できる情報を本人の承諾なしに、また、疑似的な同意のもとで収集したり、ましてやそのようなデータを販売するような業務は企業理念として行わないとのこと。拷問のような悪用に対しては脳波の異常な反応を検知して測定を中止するkill switchを導入する等、昨今問題意識が高まるテック企業の倫理には真正面から誠実に対応されている姿勢が伺え、素晴らしい講演会となりました。

NY MBAの会は「アメリカでビジネスを通じて活躍したい人たちが集う場」を目指し、2015年に有志により設立。異国の地アメリカで働き暮らす人が、「仲間」を見つけに気軽に立ち寄れる場を目指しています。毎月の定例会を通じて、異なる業界について理解を深めるだけでなく、そこで活躍する方々とのネットワーキングの場として、New Yorkエリアを中心に、全米そして日本からも、MBA在校生・卒業生、そして社会人、芸術家と、様々なバックグラウンドの参加者が集まっています。

定例会は毎月第4木曜日に開催。飛び入り参加も大歓迎。

FBページ: www.facebook.com/nymbanokai(現在会員数約700名)

ウェブサイト: www.newyork-mba.com

© Info-fresh, Inc. All Rights Reserved. Patent Pending