CHOCOのNYを生き抜くアーティスト対談〜10年前の君へ,10年後のあなたへ〜Profile 6: バレエダンサーMISA MOCHIZUKI(望月美佐)

Info-Fresh09/27/2018

NYでプロフェッショナルに活躍する実力派トップアーティスト対談シリーズProfile 6: バレエダンサーMISA MOCHIZUKI(望月美佐) (以下MISA)

CHOCO:MISAさんは、新聞やメディアで頻繁に取り上げられているコネチカット州のAlbano Ballet Companyや、ニューヨーク州の歴史あるAlbany Berkshire  Balletでプリンシパル、ソリストとして活躍されているそうですが、過去にどん
な役をされましたか。

MISA:Albano Ballet Companyでは、くるみ割り人形の雪の女王(Snow Queen)やスペインの踊り(Spanish) を、Albany Berkshire Balletでは、金平糖の精(Sugar Plum)の役をやりました。

Albany Berkshire Balletでの金平糖の精

Albano Ballet Companyでのスペインの踊りphoto by Takao Komaru

Albano Ballet Companyでの雪の女王のリハ

Albano Ballet Companyでのパフォーマンス終了後(2列目左から2番目)

The Next Stage Project でのソロダンスシーン

日本のバレエコンクールにて

アレクサンダーテクニック講師の松本直子氏とのリハーサル photo by Guy Lev Or

ルイス先生のプライベートレッスン

ストレッチの様子

CHOCO:二団体とも名前が少し似ているのですが、別の機関なのですよね。

MISA:似ていますよね(笑)。どちらともバレエカンパニーですが、スクールもあり、私は推薦やスカラシップをもらって活動していました。

CHOCO:くるみ割り人形というと、バレエの王道でこれから冬に向けてのホリデーシーズンならではという感じですね。(対談時は9月半ば)役柄は毎年変わるものなのですか?

MISA:Albano Ballet Companyは約3年間所属しましたが、徐々にちゃんとした名前のある役を任されるようになり、見せ場も増えて嬉しかったですね。2015年に(コネチカット州の)モヒガンサン・カジノで雪の女王の役を演じた時は、400人ほどの劇場が満席になり、生オーケストラで踊れて本当に気持ち良かったです。その後、Albany Berkshire Balletで2年連続金平糖の精に抜擢され、栄誉ある役なので感激でした。

CHOCO:役が大きくなるにつれ、同じ作品でも思い入れが大きく変わるのでしょうね。MISAさんは、バレエが主とのことですがコンテンポラリーも踊られるそうで。

MISA:はい、The Next Stage Project (TNSP)という団体の芸術監督であるMarijke Eliasberg氏のお誘いを受けて、コンテンポラリーも踊っていました。また現在所属のカンパニーのBenjamin Briones Balletからは、ソロやデュエットのパートをよく頂いていますが、バレエがベースのコンテンポラリー作品が多いです。

CHOCO:こちらに来られる前、日本ではどのような活動をされていましたか。思い出深いステージなどあれば。

MISA:地元兵庫の、私自身が5歳から学んだバレエスタジオで、小学生くらいからシニアの方まで教えつつ、あちこちのコンクールに出て賞を取ったりしました。

思い出深いのは、2011年に大阪のなにわ芸術祭のドン・キホーテの作品内で踊った*グラン・パ・ドゥ・ドゥのパートナーが、日本人男性で初めてフランス国立パリ・オペラ座バレエ団や、ボルドー・オペラ座バレエ団と契約を果たした大柴拓磨さんでした。
同イベントでは、その数年前にも世界で唯一の義足のプロダンサー、大前光市さんの振り付けで同氏とも踊りました。人生で初めてコンテンポラリーを踊った時だったので、大変でしたね(笑)。

CHOCO:大前光市さんは、ブラジルのリオパラリンピック閉会式で、世界中の注目を浴びた義足ダンサーですよね。私も動画を観て心から感動しました。国際的に実力を認められたダンサーの大柴拓磨さんとのデュエットも、とてもセンセーショナルなステージ体験だったことと思います。
ところで、皆さんに伺っていることなのですが、オフの時はどう過ごされていますか?

MISA:クラシックバレエの動画を見たり、世界中から来るバレエダンサーの公演を前々から押さえて観に行ったりします。私にとってバレエが全ての根底にあり、その他のジャンルもバレエの視点から見ているので。
また、小説を読むのが好きなのですが、テレビでも本でも動画でも、見出すとその世界観にのめり込んでしまうんです。何かをしながらとか、寝る前とか、見始めると意識がそっちに行っちゃって大変。なのでリラックス効果は期待できないのかも(笑)。
他には、夏でも湯船にゆっくり浸ったり、ボールを使ったヤムナというセルフケアメソッドで身体をほぐすのに徹したり。バレエはほんの一瞬の動きでも体中の神経を使い酷使するので、良いパフォーマンスをするには、動くのと同じだけ身体を効率的に休ませ、整えることが本当に大切なんです。

CHOCO:なるほど。私は、歌って喉の楽器でなく全身の楽器だとつくづく思っていて。高い音にリーチする時は、高飛びのようにボルテージを上げて行く助走を全身で創らなければ出ませんし、その日のコンディションにより、昨日出た声が出ない、ということが良くあって。なので、使っただけ休ませるというのはすごく共感できます。
声の専門の方は特に気を付けられてることと思いますが、歌い過ぎ、しゃべり過ぎは禁物で、酷使しているときは人と会わないようにしたり、電話も出ない。クラスで注意する時も、普段より数段静かに怒るようになります(笑)。

MISA:なるほど、そうなんですね!

CHOCO:身体を使って視覚化するか、身体を使って聴覚化するか。ダンスってどことなくヴォーカルに似ている気がして、ものすごく親近感が涌くんですよ。
全身運動なので、リハーサルや本番前って精神的な理由でなく、ご飯食べられなくなりませんか(笑)。

MISA:そうですね、気にしない人もいますが、やはり動く前なので私も気をつけています。

CHOCO:さて、お次ぎはこの対談のテーマとなっている10年前と10年後のご自身に向ける言葉を教えて頂けますか。

MISA:10年前、日本にいた時の自分は真面目過ぎたかな、と。スタジオでの講師としての振る舞い、責任感、プレッシャーに縛られすぎるタイプでした。
学生の時、勉強は割と得意な方だったのですが、学校にあまり興味がなくて。というよりもバレエが好き過ぎて。熱が出てもバレエには行きましたね。でも学校を休んでおいてバレエだけ行くわけにいかないじゃないですか(笑)。
なので、交換条件として学校に通った気がします。学校のテストや大学受験、センター試験も、前日までバレエに行きました。幸いちゃんと受かりましたが、私の視点は常にただバレエに向いていて。

CHOCO:まさに心も身体も『バレエ』 なのですね。ニューヨークに拠点を移されたのはいつですか。

MISA:6年前の2012年からニューヨークに住んでいますが、ニューヨークに初めて来たのは高校2年生のとき、マンハッタンにあるJoffrey Ballet Schoolの8週間のサマーインテンシブコースのオーディションに受かって 。
夢にまで見たバレエ漬けの毎日だったのですが、足が腱鞘炎になったんです。その時に身体のメンテナンスの大切さを痛感しました。
それからは、クラスでもリハーサルでも身体を100%のベストコンディションに持っていくため、柔軟体操も身体のメカニズムに沿ってこだわり抜いたテクニックやメソッドを勉強し、続けています。

CHOCO:自分の身体を知ることは、ダンサーにとっては最重要かも知れませんね。
やはりそれでダンサーの寿命なども決まってきますか?

MISA:はい、もちろん。若い時は無茶もできますが、それではいつかガタが来て踊れなくなります。
現在、アメリカンバレエシアター、メトロポリタンオペラ、ワシントンバレエに過去所属し、Radio City Music Hallでのミュージカルでプリンシパルとして活躍したLuis Villanueva氏に師事し、身体にとっての負担を減らし、何年経っても踊り続けて行くための**Therapeutic barreというウォーミングアップテクニックを学んでいます。

自分の身体と向き合うことにより、心身共に安定し、芸術面も深まり、キャラクターとしても味が出ます。お客さんに、ただ飛んだり跳ねたりがすごかった、という技術面の印象を与えるだけで終わらず、物語全体を通して根底にある芸術性を美しく体現できるようになり、今まで踊って来て今が一番最高のコンディションになりました。今後も数年、数十年、さらに良いダンスが踊れるようになると感じるようになりました。

CHOCO:年齢を重ねるにつれ磨かれて行くのは、世の女性にとって勇気づけられる言葉ですね。
この対談の最後の質問は10年後のご自身に向ける言葉なのですが、今仰ったように、もっともっとベターなダンス生活を送っているのでしょうか。

MISA:はい。 年齢とともに体力も筋肉も当然落ちるのですが、世界で一つしかない自分の身体を正しく知り、カスタマイズし、メンテナンスと努力で、若い時よりも良いパフォーマンスが可能です。
実際に何十年も踊り続けていくプロのバレエダンサー達は、皆勤勉で努力家ゆえに年を重ねるごとに更にテクニックに磨きがかかり、美しくなって行きます。
決して年齢のせいで踊れなくなるわけではなく、いかに『無駄を削ぎ落とし正しく動く』ということを積み重ねてきたかという点で、ダンサーの真価が問われると私は考えています。今から10年後の私も、今よりももっとたくさんのことを表現できていると思います。

CHOCO:MISAさんの強い信念、そしてそれらの理論はきっと生き方にも精通しますね。年齢を重ねるごとの輝き、これからのご活躍もとても楽しみにしています。今日はどうもありがとうございました。

MISA:ありがとうございました。

*グランパドドゥ(Grand-pas-de-deux)—クラシックバレエの全幕作品の最大の見せ場となるペアのダンス
**Therapeutic barre —60年代&70年代にJoAnna Kneelandによって発案されたウォーミングアップエクササイズ

吉岡ちょこ (CHOCO YOSHIOKA)
シンガーソングライター
ACE音楽スタジオ代表
http://acemusicstudio.com/
ALIVEパフォーマンスショウ総合プロデューサー
https://www.alivenyc.net/
京都出身。90年代後半に来米しボストンのバークリー音楽大学を卒業後ニューヨークに移住。パフォーマンス活動の傍ら数々のショーをプロデュース。

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